こんばんは、ぼたんです。
久々の辻村さん作品、『島はぼくらと』。
派手に感情を揺さぶれるような感じではなく、穏やかに心にじわじわと響いてくるような、のんびり読書を楽しみたいときに読みたい一冊。
あらすじ
瀬戸内の離島で暮らす4人の高校生。
母と祖母の女三代で暮らす、朱里。
どこか醒めた綱元の一人娘、衣香。
父のロハス計画で移住してきた、源樹。
演劇がしたいのに部活に参加できない、新。
家族構成も背景も異なる幼馴染の4人が、この故郷での高校生活を送る中でたくさんの出会い・出来事に遭遇し、ときに葛藤しながら、絆を確かめていく物語。
感想
場所は違えど離島での生活経験があるので、独特のコミュニティの雰囲気や、島暮らしでの苦労など、少し親近感を持って読めました。
島の取り組みや、島ならではのコミュニティ、島民と移住者の関係、地方医療、災害…、どれも本当にリアリティがあります。
主人公の4人の高校生は、身近にそれぞれの登場人物が実在したとして、たぶん4人で仲良くしているところが想像つかないような、みんな性格や背景の違う4人ですが、『離島』という特殊な環境で数少ない同い年の友人として一緒に育ってきた…まるで兄弟のような雰囲気を感じる。
ファンタジーでも何でもなくて、ただ、みんなの日常が紡がれている。
これまの辻村さん作品でも、思春期の学生を主人公に据えた作品がいくつもありますが、本作はこれまでのように葛藤するような重さを感じるこどもたちではなく、もちろん各々悩みとか抱えていることはあるけどしっかり前を見据えているというか、苦しみの共感よりも応援したくなるような共感。
衣香ちゃんの葛藤は、読んでいて応援しつつも涙が抑えられませんでしたが…笑
「幻の脚本」探しから、親子が近付く話、テレビ出演の話…、各章で紡がれる日常で起こる出来事の数々。
読み終わってみると、いろんな話がしっかりつながっていて驚く。
後半になって、「あ!はじめの方で出てきたこの話がここにもつながるのか!」。
…楽しい。
最後まで読んでいるともうみんなに共感しちゃって、私も読みながら辛くなってきて、でもみんなのあたたかさにほっとして読了。
4人の淡い恋模様はその後どうなったのかしら…。
さすが辻村さん、のんびりしたこの本著の中でも、物語の雰囲気に同化しながらしっかりミステリ要素もあって面白い。
忘れちゃいけないのが、同じく辻村さん作品の『スロウハイツの神様』のあの人物が本著にも登場しています!!
どこかで見覚えのある名前だな…と思って、気づいてみると「本当に本人だ…!」。
こうやって違う物語の中で見知った登場人物が出てきてくれるのが、本当に嬉しいし楽しい。
また、会えたって。
辻村さん作品の中では、穏やかに読み進められる、心あたたまる一冊でした。
ぼたん🌸
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