こんばんは、ぼたんです。
9月はバタバタと過ぎてしまい、あっという間の10月です。
2023年もあと3か月…。最後まで何が起きるかわからない年になりそうです。
さて、今回は恩田陸さんの『猫と針』。
こちらは小説ではなく、劇団キャラメルボックスさんのために書き下ろされた戯曲の台本そのものと思っていいのかもしれないです。
全章が登場人物による会話形式で進み、要所要所で人物の入退場などの指示書きが入ってきます。
映画監督となった高校の同級生からの声掛けにより、エキストラ出演のため久しぶりに集まった同級生5人。
奇しくも、予定していた日が同じく同級生オギワラの葬式の日と重なる。
葬式後に酒を飲みかわしながら、映画撮影が始まる。
各々の近況や思い出話を織り交ぜながら、一人が席を立てばその不在者の話で盛り上がり…。
少しずつ詳細が見えてくる各登場人物の境遇。
高校の学園祭で起きた、食中毒事件。なくなったフィルム。
ぼんやりとした会話の中心には亡くなったオギワラの影が付いてくる。
正直、一通り読み終わって、よくわからないというのが最初の感想。
一度落ち着いて、再度流し読み。
久しぶりの再会に、手探り状態で始まる5人の会話。
最後にはその距離が縮まって、みんな素直に自分の話をし、他人の話を受け入れる。
オギワラの死も「やっぱり」の共感、食中毒事件の犯人も意外とみんなすんなり受け入れている様子?
この各章を通しての登場人物の心理的距離感の変化みたいなものが面白いなあと。
不在の人物について語り合う、自身の経験でもあるある話。
脚本の面白さもさることながら、著者によるあとがきもなかなかに面白い。
舞台の日程が決まっているのに筆が進まない筆者の、もがき苦しみ物語を誕生させたいきさつが日記の抜き書きとともに書かれている。
内容が固まっていないのに、先にチケットが売れる。
公演日程はずっと前に決まっているのに、台本が完成したのが公演初日の10日前。
脚本家も役者さんもその他関係者の皆さまも、この緊張したスケジュールの中この舞台作品を作られていたのかと驚きとともに感心する。
こうして舞台脚本として会話だけの内容となっても、恩田さんの雰囲気を感じるのだから不思議。
どこの何が恩田さんらしさを作り上げているのか。
読みやすく、ボリュームも軽めなので、雨の日のちょっと一息という時間におすすめの一冊です。
ぼたん🌸
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