こんにちは、ぼたんです。
日本を代表するミステリー作家・東野圭吾さんの『パラレルワールド・ラブストーリー』。
並走する電車の車窓から見える彼女に一目惚れをした崇史。
しかし後に、長年の親友・智彦の恋人として彼女・麻由子と再会を果たす。
ところがある日の朝、目を覚ますと彼女は自分の恋人として隣にいた。
親友の恋人だったはずの真由子。
自分の恋人であるはずの真由子。
真実はどこにあるのか。現実を追いかけて最後に見えてきた「記憶」とは。
東野さんといえば、『容疑者Xの献身』や『白夜行』など、数々の賞を受賞している超人気作家のおひとりです。
私がはじめて読んだのは、中国へ留学していたとき現地の本屋さんにあった『流星の絆』でした。
中国語翻訳されたハードカバーの本を、辞書を片手に一生懸命読みました。
改めて思い出すと、海を越えて現地のことばで翻訳されて、物語が世界中の人たちへ届いていること、本当に素晴らしいことだなあと感じます。
この『パラレルワールド・ラブストーリー』、最初は一瞬混乱します(笑)
親友の恋人として彼女を紹介された崇史の話から始まり、次の章では崇史の彼女として語り口に現れてくるので、「あれ?同じ人だよね…?」とつい読み返して確認しました。
自分の知らないところで、周りが結託して何かを企んでいる。
自身に影響が出ているその状況下で真実を追い求めてもがくも、手が届く前に情報を知ってそうな周囲の人間が次々と消えていく…。
単なる「記憶違い」で済むような話ではなく、自分が自分である自信が持てなくなって、図り得ないほど不安な状況だったと思います。
少しづつ思い出される過去の記憶と、親友と恋人との間で揺れる各人のこころ。
親友を裏切ってしまってでも恋を優先させたいと思った崇史、恋人を誰にもとられたくない、けど自分が傷ついてでも恋人と親友の幸せを願おうとした智彦、どちらが正解かとかそういうものはなくて、どちらの気持ちも推察できるから心がぎゅーっと掴まれるように辛い。
最後に判明する智彦の決断が、切なくて涙がこぼれる。
果たして崇史と麻由子はその後どういった道を歩んでいくのか。
親友も恋人も、どちらも失いたくない、手に入れたい。
そう思ったとき、自分ならどう選択するんだろう…。
それにしても、この「記憶」を操作できるようになる科学の発展、もう現実でもそんなところまで到達しているのでしょうか?
PTSDなど何かしらの病気や病状の改善ために用いられるようになると救われる人もいるのかもしれませんが、倫理観などかなり賛否両論出てきそうなテーマですよね。
自身のこどもだった時代を思い出しても、科学技術の発展が恐ろしく早く、生活が便利になっていく一方で、言いようのない焦りや幸せを感じるセンサーが鈍ってきているような気がしてしまいます。
「人は暇だと不幸になる」とは良く聞きますが、生活が便利になって余暇時間が増えて、ネットで情報がすぐに手に入る今、キラキラした情報に振り回され相対的に自分が劣っているように感じてしまう(果たして何に対して劣っていると感じるのか…)。
…どんどん話が逸れてしまいました(^^;)
『パラレルワールド・ラブストーリー』、秋の夜長にしっとり読みたい一冊です。
ぼたん🌸
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