『麦の海に沈む果実』 恩田陸 著

読書

 

こんにちは、ぼたんです。

 

 

 

『麦の海に沈む果実』

恩田さんの作品の中でも「理瀬シリーズ」と呼ばれる作品のひとつ。

 

 

留学に行ったときも、遠方へ引っ越しになったときも、十年来ずっと持ち歩いている大好きな一冊です。

 

 

 

 

 

湿原にぽっかりと浮かぶ全寮制の学園。

「三月以外の転入生は破滅をもたらす」といわれるこの学園に、2月の終わりに転入した理瀬。

 

 

様々な境遇により世間から隔絶されたこの学園では、望む環境はすべて一流のものがそろえられる不自由のない生活。

しかし同時に、望んで出られるという環境ではないという閉塞感。

 

 

そんな中で次々に起こる生徒の死・失踪、校長先生のお茶会、いわくつきの赤い本…

 

 

自分はなぜこの学園に連れてこられたのか。初めて踏み入れた地のはずなのに、懐かしい感じのするこの学園に。

 

 

 

 

はじめはいわゆる「学園ミステリー」ものかと思って、これら殺人やら事故の真相に近づいていくような話かと思いきや、意表をつかれるラストに読了後の満足感たるや言葉になりません。

 

「理瀬シリーズ」の作品のうち初めて手に取ったのがこの作品で、とにかくこの理瀬という女の子に強烈に惹かれました。

 

この作品だけではわかり得ない彼女の雰囲気が他の作品を読む中でさらに深く感じられるので、併せて読んでみていただけたらもっと楽しめると思います。

 

参考:理瀬シリーズ作品 一覧

・三月は深き紅の淵を

・麦の海に沈む果実

・黒と茶の幻想

・黄昏の百合の骨

・薔薇のなかの蛇

 

 

美しくて凛としていて聡明で、か弱く控え目で、冷静冷酷で…。

様々な雰囲気を状況によって使い分けられる器用さと頭の回転の速さ。

なぜか目が離せなくなる。

 

 

 

不思議・不可解・違和感…少しずつこれらが重なっていく不穏感と、この年頃にあるもどかしさや焦燥感。

色褪せた静かな物語の始まりから、少しずつ鮮やかに疾走感が出てくるような感じで、気づくと物語に飲み込まれ止まることなく読み進めてしまう。

 

 

 

なんだろう…。恩田陸さんのこの湿り気のある爽やかな暗さ。やみつきになる。

 

 

 

 

ぼたん🌸

 

 

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