『キャロリング』有川浩 著

読書
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こんにちは、ぼたんです。

 

 

クリスマスから少し遅れてしまいましたが、有川ひろさんの『キャロリング』。

 

 

 

子供服メーカー「エンジェル・メーカー」に勤める大和は、幼少期に家庭内で父親が母親に暴力を振るう毎日を過ごしてきた。

 

大きくなり父親に対抗できる年頃になると、それまで一方的にやられていた母親を守るべく立ち上がるも、母親からは「暴力的な子」の烙印を押され、その後離婚した両親の原因は「暴力的な子」である自分のせいだと言い渡される。

 

高校生のころ両親が再婚することになり、それを機に一人暮らしを始め、両親とも絶縁状態に。

 

 

 

「不幸の比べっこなんかしても仕方ないでしょ。」

心の荒んだ大和を救ってくれたのは、母親の友人で、「エンジェル・メーカー」の代表でもある英代だった。

 

 

英世の勧めもあり「エンジェル・メーカー」でアルバイトを始めた大和は、そのまま同社で内定をもらい、営業マンとして社会人をスタートすることに。

その後、デザイナーとした新たに入社してきたのが同い年の柊子だった。

 

 

きっと人の良い両親に大事に育てられてきたのであろう柊子の人柄は大和にとって眩しく、恋人としての時間を過ごし、いざ結婚というころになると、その育ってきた環境の違いがそれぞれの持つ「辞書」の違いとして如実に表れ、大和は純粋な柊子を汚すまいと、逃げるようにして柊子との関係を終わらせる。

 

 

 

 

そんな2人の務める「エンジェル・メーカー」は来るクリスマスの日、倒産を迎えることが決定した。

 

 

子供服制作の傍ら行っていた学童事業で預かっていた小学生の1人・航平もまた、両親の離婚の危機に直面していた。

 

キャリアウーマンでバリバリ仕事をこなす母親と、同じ職場で働く少し要領の悪い父親。

仕事を頑張る自分を応援してほしい母親と、プライドが邪魔して応援できずに浮気してしまった父親。

両親の話は平行線のまま解決せず、父親は荷物をまとめて家を出ていった。

 

クリスマスが過ぎれば、新事業の立ち上げに抜擢された母親とともに海外へ引っ越すことが決まっている。

それまでに、両親が仲直りしてまた家族一緒に暮らせないかと動き出す航平。

 

 

そんな航平は心優しい柊子を説得し協力してもらい、「エンジェル・メーカー」のみんなには知人の英会話教室に通うことになったと嘘をつき、横浜の父親のもとへ足繫く通うように。

ひょんなことからその嘘が大和にバレてしまい、航平と柊子の気持ちを汲んだ大和も2人に協力するように。

 

 

 

クリスマスまであと数日。

そんなころ事件が起きる。

 

 

 

 

航平の父親が修行している整骨院が抱える借金のため、父親に会いに来ていた航平と柊子が誘拐される。

誘拐犯となった「赤木ファイナンス」の面々もまた、それぞれの大切な人を守るべく必死だった。

 

 

 

そんな誘拐事件の意外な結末とは…。

そして航平の両親と、大和と柊子の関係はどうなるのか…。

 

 

 

 

べた甘作品(笑)が多いイメージだった有川さんの、ほろ苦ストーリーな一冊でした。

 

でもやっぱり有川さんっぽさが至るところに感じられて、「春は桜色、姫は純白」(詳細は小説をご確認ください笑)のくだりとかは『植物図鑑』が、大切な誰かを守るため一生懸命な姿とかは色んな作品の登場人物たちと通ずる感じがします。

 

 

そうなんですよね、有川さんの作品って「ヒーロー」感というか「泥臭い王子様」感というか、不器用ながら”大切な人を守る”っていう描写がすごく胸を掴まれる。

 

 

今作もまた一人一人キャラクターがしっかり描かれていて、どの登場人物もとても人間味あふれていて。

 

やっぱりMVPは英代さんですかね!笑

少ないセリフからにじみ出る人柄が、本当にあたたかで優しい。

 

 

英代さんのセリフでハッとしたのが

「愛されている子供さんほど、お母さんを傷つける力を持てるんですもの。」

 

 

腕っぷしの力の話ではなく、愛しているからこそ、子供のちょっとした言葉で母親は傷つく。

愛されているからこそ、子供は母親を傷つける力を持つ。

もし子供を愛していなければ、子供の一言に傷ついたりはしない。

 

 

なるほどなあ…。

 

 

 

個人的に柊子さんもとても好きなキャラクターのひとり。

人の心に寄り添える優しさをもった、あたたかで心がきれいな人。

 

「話したことが全部宝物になる感じなの。」

この感性もとても素敵。

 

 

 

みんなみんな、ゆっくりでもちゃんと幸せになってよね!

 

 

 

 

ぼたん🌸

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