『星をつなぐ手』 村山早紀 著

読書
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こんばんは、ぼたんです。

 

 

村山早紀さんの『桜風堂ものがたり』の続編、『星をつなぐ手』。

 

前作では、とある百貨店内の大型書店の書店員・月原一整がある事件をきっかけにその書店を去ることとなり、ご縁があって田舎町の「桜風堂書店」で病床の店主に代わり店の留守を預かることになります。

 

そして、一整が元の書店を去るころに見出していた一冊の本。

一整の気持ちを無駄にしないよう、一整の目利きを信じた仲間たちがこの本をたくさんの人のもとへ届けるべく奔走します。

そして次々に連鎖する奇跡――。

 

 

 

 

今作はそんな前作のその後の物語。

 

一整の誠実にまっすぐ本と向き合ってきた人柄が周りの人にしっかり伝わっており、山間の小さな田舎町で奇跡を引き起こします。

 

 

人気ベストセラー作家の新作が「桜風堂書店」には入荷されないことに気づいた一整。

元の書店時代に取引のあった版元の営業へ連絡を入れるも、田舎町の小さな書店ということもあり全く掛け合ってもらえず。

それでも迫り来る新刊の発売日。待ちわびる近隣住民のためにも、なんとか発売日に入荷しようと考える一整だったが…。

 

 

そんな一整へ、元いた「銀河堂書店」の店長より一本の電話が入る。

様々な噂が流れる、なかなか人前に姿を見せない銀河堂書店のオーナーが、一整と食事を共にしたいとのこと。

会食の場で語られるオーナーの過去や本・書店に対する想い、銀河堂書店・一整に対するエールとは。

 

 

桜風堂書店へ戻ると、件の人気ベストセラー作家本人が訪れる。

山登りが趣味だというその作家は近くに来たついでに立ち寄ってみたと言うが、過去に銀河堂書店で働く一整の姿に助けられた過去があり、その恩返しとして一整が取り合ってもらえなかった版元へ直談判し、桜風堂へ新刊が届くように手配をしてくれていた。

当然のものとして、人助けをしていたとは思ってもみなかった一整は驚くが、この縁がきっかけとなり、この町に伝わる冬の「星まつり」の日、サイン会を開催することが決まる。

 

 

最寄り駅から徒歩30分、観光客もまばらとなってきたこの田舎町での作家のサイン会など通常では到底ありえない。

しかしこの話を聞きつけた前作で一整が見出し、ベストセラーへ導いたあの作家も「一整のために」と駆けつけてくれることとなり、

お互い素直に言葉を伝えられず距離が空いていた従兄弟であり人気作家の蓬野も、田舎町での一大イベントに助力を申し出てくれ、3作家合同での豪華なサイン会へと発展していく。

 

 

このサイン会をきっかに町の各所でも活気があふれ、小さな町の書店の一イベントが、町全体を巻き込み盛り上げていく。

 

 

 

両片想いなのにお互い遠慮がちで素直に想いを伝えられない一整と苑絵

 

親友の苑絵を応援すべく、一整への秘めた想いを抑えようとする渚沙

 

そんな渚沙をそっと見守り、また、自身と一整との壁を取り払いたいと願う蓬野

 

自信をなくし引きこもりがちになるも、桜風堂書店との出会いをきっかけに一歩踏み出す来未

 

 

 

その過程で各人が悩み、自分の素直な気持ちに気づき、一歩を踏み出し…

 

安心して読み進められる、始終あたたかな物語。登場人物みな繊細でやさしさに溢れ、各所でつい目が湿ります。(歳を重ねて、年々涙腺が緩くなってきている気がします)

 

何かを一生懸命に頑張っている姿は気づかぬ間に周囲の人へ刺激をもたらし、そんな姿に感銘を受けた人々から思ってもみない恩返しが届く。

どうやら神様はしっかりみんのことを見てくれているようです。

 

 

 

作者によるあとがきには、簡潔にですが各人のその後についても描かれています。

「また続きを読みたいな」と思っていたところに、あとがきでさらっとその後が描かれていたことに少し面喰いましたが、おおよそ自分が勝手に願ったとおりの将来を送っているようで嬉しかったです。

叶うなら、またゆっくりと各登場人物のその後を読み進めたいものです。

 

 

 

 

 

思えば、本をたくさん買うほどのお小遣いがなかった小中学生のころは、学校の図書室や町の図書館でひたすら本を探しては読み、

 

高校生になってアルバイトを始めるとその半分以上を本代に費やし、下校時に最寄り駅の書店へ立ち寄り、平積みになった正面の棚の移り変わりを見るのが好きでした。

 

 

 

今となっては足蹴く通った駅前の書店は姿を消し、

自身は書店もない離島へ居を移し、

すっかりリアル書店との距離が空いてしまいました。

 

 

この本を読むとリアル書店が恋しくなります。

 

 

 

以前の職場ではいわゆる商業施設に関する仕事に就いており、書店の入居を推しづらいという現実も実感を伴ってよく理解できます。

実際、新しい商業施設を企画するにあたり、その収益性から書店の入居を見送った一件がありました。

しかし、開業前後のお客様へのアンケートでは「書店がほしい」という声は根強く、それを叶えられなかった己の力不足に、お客様へも書店へも、申し訳ないという後悔の気持ちが残っています。

 

 

 

 

すっかり書店から足が離れ、売上に全く貢献できていない今の自分が申すのも大変お門違いではありますが、

間違いなく、私の人生には本が必要であり、それは今までもずっとそうで、これからもきっと変わらなくて。

今の自分が在るのは、たくさんの本との出会いがあったおかげだと確信を持って言える。

 

きっとそうである人がたくさんいて、これから本を必要とする人もたくさん現れるだろうし、だからこそ偶然の出会いを楽しめる本屋という場所は、これからもずっとなくならずに元気でいてほしいと願っています。

 

背表紙のタイトルを目で追いかけながら、表紙のカバーイラストの雰囲気を楽しみながら、インクと紙の香りを胸いっぱいに吸い込みながら、新しい一冊との出会いを探すあの時間がたまらなく恋しくなります。

 

 

 

なぜか感傷に浸りたくなってきたので、このあたりで。

 

 

 

ぼたん🌸

 

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