こんにちは、ぼたんです。
最近は秋晴れの日が多く、過ごしやすい日々ですね。
『劫尽童女』
背表紙のあらすじ書きでは、このように紹介されています。
父・伊勢崎博士の手で容易ならぬ超能力を与えられた少女・遥(ハルカ)。彼ら親子は、属していた秘密組織「ZOO」から逃亡していた。そして、七年を経て、組織の追ってにより、再び戦いの中へ身を投じることに!激闘で父を失った遥は、やはり特殊能力を持つ犬・アレキサンダーと孤児院に身を潜めるが――。殺戮、数奇な運命、成長する少女。彼女の行く手に待つのは何か?
父である伊勢崎博士の研究により、大学レベルの知力と、超人的な五感・身体能力を開発された10歳の少女・遥。
作中のはじめでは、自身のことを「化け物」と呼称しながら、秘密組織「ZOO」から命を狙われ逃亡する日々、時には彼らを容赦なく討ちとめる緊張の生活を過ごします。
恩田さんの超能力ものでは「常野物語」シリーズがありますが、常野物語の超能力は平和的で突然変異のような色が強い感じで、反対に、「劫尽童女」遥の超能力はどちらかというと戦闘的で人為的につくられたものとなっています。
置かれた境遇からか、年齢の割に冷めていて、どこかふつうの愛情に憧れる、そんな諦めに近い自分の運命を受け入れるような姿勢は、どこか別作で出てくる少女・理瀬のことが思い浮かびました。
『劫尽童女』は「こうじんどうじょ」と読みます。
作中では
「劫尽火。コウジンカ。」
「悪いことをすると、地獄で劫火に焼かれるんだよ。劫尽火ともいうんだけどね。世界が崩壊する時に、世界を焼き尽くす炎のことをそう呼ぶのさ。」
というセリフが出てきます。
はじめこそ、博士やこの少女をめぐって様々な戦闘シーンが描かれ、この少女はなにか殺戮兵器や世界を破壊するような存在として描かれるのかと思いきや、むしろその反対で、後半では自分の超能力が誰かの力になると思い進めていた作戦が大勢を傷つけるものだったことを知り傷つく姿や、自身の力を活かして人々を救うためにカンボジアで地雷撤去を手伝う姿など、読み終えてみれば純粋な少女が、暗い葛藤の日々から抜け出して、人ならざる自分の在り方を見つけ出す、そんなお話の印象を受けました。
恩田陸さんの作品は、どこか暗さや重たさを感じる物語が多々あるのですが、決してズシンとくるのではなく、軽やかに読み進められて、後味も決して悪くないのがいつも本当に不思議です。
SFやファンタジーに近い作品も、恩田さんが描くとなぜか現実味を感じるというか、そう人もいるよねってすんなり受け入れられてしまうというか…。
そうですね、恩田さんの作品はどれもすっと心に入ってくる。
相性というか好みの問題もあると思いますが、いろいろな作家さんの本を読んでいる中で、恩田さんの作品が一番自然に入ってくるような、そんな感じがします。
(なので気づいたら本棚には恩田さん作品がたくさん並んでいました…笑)
うまく締めの言葉が思い浮かばないので、中途半端ですが、またお会いしましょう。
ぼたん🌸
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