こんばんは、ぼたんです。
最近バタバタと環境が変わり、すっかり更新が滞ってしまいました。
生活も落ち着いて、ますます読書の時間が取れるようになりそうなので、これからまた色々な物語と出会えるのが楽しみです。
さて、前回の有川浩さんの『空の中』に続いて、『塩の街』です。
こちらは、例の”自衛隊三部作”の陸自を描いた作品で、有川さんのデビュー作にあたります。
単行本にはデビュー時に書かれた作品に続き、アフターストーリーも追記され、読み応えたっぷりです。
突如世界各地に巨大な塩の結晶が降り注ぎ、時を同じくして人々が徐々に塩と化し、雨に溶かされ、砕け散り、命を失っていく世界へ変わり果てます。
ヒロインの真奈はその塩害により両親を失った高校生。
一人となったことを知った暴漢たちに襲われそうになったところを、主人公の自衛官・秋庭に助けられ、身寄りのない彼女と10歳離れた自衛官の共同生活が始まる。
愛する人が塩の結晶と化していくとき、そばにいる人は何を思うのか。
自身が塩の結晶になろうとするとき、最後に人は何を思うのか。
顔の見知った人々の塩化被害が目の前で起こるようになり、現実を目の前に感じてきたとき、少しずつ2人の心情にも変化が生じるように。
気づいたときにはお互いがお互いを大切に想うようになり、秋庭は「真奈を失わないために」結果として世界を救っていく。
もうね、じれったいのよ。
秋庭さんの雰囲気は、『図書館戦争』の堂上教官とか、『海の底』の夏木さんあたりに通ずるものがあり、少々ぶっきらぼうで不器用で、でも本当に相手を大切に想っているようなかわいい人。
真奈もそれこそ『図書館戦争』の郁とか、『海の底』の望ちゃんとかに通ずるような、芯が強くて、周囲の人の気持ちを察することができて、かよわく守られるだけでなく、もがきながらも相手の力になりたいと努力できる人。
有川さんのこの年上不器用自衛官×年下芯の強め女子の組み合わせ、好きです。
世界を救うこととなった秋庭さんの「単純に好きな女が塩になるのを見たくなかっただけだ。そこに機会が転がり込んできたから飛び乗った、それだけだ」という動機。
それに対する、秋庭さんの腐れ縁にして今回の作戦立案者である入江さんの、ロマンティックで冷静な意見がすごーく心に残る。
(ここは本当に小説で確認してほしい。秋庭さんが結晶破壊作戦に向かっている最中の、真奈と入江さんの会話の中に出てきます)
アフターストーリーとして語られる、塩害の被害が終焉したあとの2人の旅のお話。
前段階でお互いの気持ちが通じ合っている2人の、より深まった関係性の描かれ方がきゅんと来ます。
もう秋庭さんから真奈へのあふれる気持ちがダダ洩れ(と感じる)。
だけど、永遠に縮まらない10歳という年の差に悩む真奈が健気で応援したくなる。
塩害により大きく変わってしまった世界。
塩害により交わることとなった2人の運命。
失ったものもたくさんあり、反対に、それにより出会えた人であり、
塩害がなければ出会えなかったし、肉親を失うこともなかった。
どちらが良かったなんて誰にもわからないけど、読者の私は秋庭さんと真奈の幸せがなにより嬉しいです。
有川さんの物語を読むと、いつも登場人物たちの続きの人生が気になってしまう。
「クジラの彼」など短編集でちらっとスピンオフが出ることもありますが、全然足りない!笑
それくらい面白くて、魅力的なキャラクターがたくさん登場する、素敵な作家さんです。
ぼたん🌸
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